お葬式の基礎知識

お葬式はなぜするのですか。

なぜ人はお葬式をしてきたのでしょうか。
お葬式をすることがあたりまえであったのは「遺体は弔わなければならない」ということが「なぜお葬式をしなければならないのか」と考える以前に、ごく自然な人間的感情として存在したからだと思われます。

お葬式4つの役割

人が亡くなると一般的にはお葬式をしますが、お葬式には概ね次の役割があると考えられます。

社会的役割
社会にその人の死を通知(死亡届を役所に提出)します。社会の人々がお葬式に集まりその死を確認します。
物理的役割
遺体は腐敗し始めます。死者の尊厳を守るためにも火で燃やすなど(火葬、土葬)の処理を行い死者(遺体)と訣別します。
人は愛惜の念を抱くと同時に遺体が腐敗することへの恐怖心を合わせ持ちます。
宗教的役割
人の死が新たな死を招き「崇」のようなものを引き起こすのではないかという恐怖心や、遺体が腐敗することへの恐怖心を和らげるために死者の霊を愛惜する儀礼が必要とされました。
死者の霊を慰め「あの世」での幸せを祈ると同時に、死者と遺された者との間に新たな関係を作り上げるために宗教的な儀礼が必要とされ、これが「お葬式」の中心をなしました。
心理的役割
人の死は周囲の人に深い悲しみや心の痛みを生じさせます。
特に死者と精神的な関係が密であった配偶者や家族には、大きな衝撃を与え身を切り裂くような深刻な痛みを生じさせます。
衝撃、悲しみ、痛みを緩和するためにも弔いのための儀礼が必要とされました。
しかし、一連の儀礼のプロセスを踏むだけでは痛み(グリーフ)は容易に解決されません。それが癒されるまでにしばし長い時間(グリーフワーク)が必要とされる場合があります。

葬儀とは

死者を葬る儀式であり、死別に出会った人が悲しみ悼む一連の儀礼のことです。
一連とは、臨終の看取りから納棺、通夜、葬儀式、告別式、出棺、火葬、納骨、法事までのことを指します。
広い意味では「葬送儀礼」の略です。
狭い意味では「葬儀式」=「お葬式」を指す言葉でもあります。
一般的に、葬儀に参列するという時に使用する「葬儀」という言葉は、「葬儀式」あるいは「告別式」を指します。
人が死ぬということは、大切な命が喪われることです。
当然のことながら人の死は、社会的にも精神的にも危機状態を作り出します。
それ故に、命の大切さに見合った受け止め方が要請されます。
葬送儀礼を歴史的に見ると、その時代や地域、文化によって様々な形態で営まれてきたことがわかります。
また、その民族が持っている文化や死生観によっても大きく異なります。
共通して言えることは、死者の危機を乗り越えるためには手厚い儀礼が必要であると人々に理解され、葬儀が非日常な特別なこととして営まれてきたということです。
そして、これらが制度化され慣習化されてきたのが弔う為の葬送儀礼、即ち「葬儀」です。

宗教儀礼としての葬儀式

葬儀式は仏教、神道、キリスト教などの宗教儀礼として行われるのが一般的です。
葬儀式自体は宗教儀礼ですのでそれぞれの宗教や宗派で異なります。
日本の葬儀式の90%以上が仏式で執り行われています。
最近では、少しずつですが特定の宗教儀礼に依らない葬儀式も見られます。
これらは、「無宗教葬」とか「自由葬」などと呼ばれています。
もともと「葬儀」=「宗教」ではありません。
したがって、自らの心の問題を解決することが出来れば、宗教で葬儀式を執り行うという方法に頼らなくてもよく、自らの考える葬儀式を行えばよいと思います。
しかし、一部では「無宗教葬」や「自由葬」があたかもファッションの流行のようにもてはやされている傾向にあります。
「無宗教葬」や「自由葬」に慌てて飛びついて、やがて心にわだかまりを残し後悔の念を招くようなことがあれば、それはその人にとって不幸なことだと思います。
葬儀を考えることは、自分の生き方を考えることにも通じますので慎重に考えたいものです。

一般的(仏式の場合)な葬儀の流れ

一般的な仏式葬儀の流れをまとめました。

  • 臨終 看取り・死の判定(死亡診断書)・末期の水・死後の処置(清拭)・遺体搬送・遺体安置(枕経)
  • 葬儀準備 相談(葬儀会社)・関係先への連絡・死亡届け・火葬許可申請
  • 納棺 遺体処置(湯灌・エンバーミング)・納棺(旅支度)
  • 通夜 弔問受付・通夜振る舞い
  • 葬儀 葬儀・告別式・お別れの儀・出棺
  • 火葬 お別れ(炉前)・荼毘・拾骨
  • 直後儀礼 初七日法要(繰り上げ・繰り込み)・精進落とし・後飾り
  • 諸手続き 保険請求・年金手続き・各種名義変更等
  • 喪の期間 喪中(四十九日)・一周忌・納骨・手元供養
  • 追悼儀礼 三回忌・七回忌・十三回忌等

葬儀(仏式の場合)5つのプロセス

「お葬式4つの役割」で、お葬式をする4つの役割をお話いたしました。
この項では、葬儀がどのようなプロセスを経て執り行われているのかを、仏式葬儀を例にまとめました。

死を受け入れる [通夜]
通夜とは、本来夜通し寝ないで故人の傍で過ごす(遺族が故人を囲んでお別れのための十分な時間を持つ)という意味合いがあります。
現状行われている葬儀では、通夜に会葬する方が多く告別式の意味合いが強くなっています。
死者を見送る [葬儀式]
僧侶による読経や焼香といった宗教的儀式を言います。
死を社会的に確認する [告別式]
弔辞、弔電の奉読や喪主の挨拶といったセレモニーのことです。
大規模な葬儀(社葬・団体葬)の場合を除いて、通常一般的に行われている葬儀(個人葬・一般葬)では、「葬儀式」と「告別式」が区別なく同時に行われています。
ご遺体の処理 [火葬・埋葬]
市町村長の許可を得て火葬、埋葬します。
また、土葬の出来る場所は都道府県の条例によります。
農山村部の土葬がほとんどですが、東京でも奥多摩の一部では許可されています。
我が国の火葬率は99.5%を超えています。
グリーフワーク [法要]
法要で、故人を偲び供養します。
グリーフワークとは、大切な人の死を受け入れその悲しみを治癒するためのプロセスのことを言います。