様々な葬送の形
散骨(自然葬)
- 散骨とは 遺骨や遺灰を、川や海あるいは山などに撒く「自然葬」の一種に「散骨」と言う葬法が有ります。
- インドで遺灰をガンジス川に撒くという葬送はよく知られています。
日本では自然葬を推進する「葬送の自由をすすめる会」がこれまで神奈川県の相模湾などで数度にわたって自然葬を実施してきています。
散骨を「お葬式」と考えるよりは、「お墓」をどうするかと言う問題に近いと考えます。
また多くの方は、散骨と自然葬を同じように考えているようです。
- 散骨と墓埋法 墓埋法第4条1項に「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域 にこれを行ってはならない」とあります。
- 「散骨」は埋葬でも埋蔵でもないので条文の対象外となります。
厚生省の非公式な見解として「墓埋法は土葬と火葬が半々だった戦後の混乱期の1948(昭和23)年に出来たもので、勝手に土葬して伝染病が拡大しないようにという、公衆衛生上の問題のほうが大きかったのではないか」との発言がありました。さらに「当時は遺灰を海や山に撒くといった慰霊の方法は、役人の頭の中には全くなかったようだ」との発言もあります。
現在の墓埋法には、「散骨」等についての記述がなく実情に合わない部分があるとして新たな法制化を求める動きもあります。
- 散骨と刑法 遺骨の遺棄を禁じる「遺骨遺棄罪」の規定が有ります。
- 「葬送の自由をすすめる会」では「葬送のために遺灰を撒くということは遺骨遺棄にはあたらない。
特に故人の遺言や遺族の承諾があって、公序良俗にかなった方法で時と場所を選べば、犯罪構成要件には全く当らない」と述べています。
法務省が発表した散骨(自然葬)に関しての公式な見解としては、 1991(平成3)年「葬送の自由をすすめる会」が相模湾で行った自然葬についての見解があります。マスコミ報道された事例を受けての法務省発表を以下記します。
「 刑法190条の規定(遺骨遺棄等)」は、社会的習俗としての宗教的感情などを保護するのが目的であり、葬送のための祭祀で節度を持って行われる限り問題はない。」
また、所轄の厚生省も墓埋法第4条1項の『埋葬又は焼骨の舞蔵は、墓地以外の区域にこれを行ってはならない』に関して、「自然葬を禁じる条文ではない」とコメントしています。
- 個人の散骨 いつも会えるような気になるので、夫の遺骨を自宅の庭に撒きたいという方がいらっしゃいます。
- 「墓埋法」では、墓地以外の場所に焼骨や遺体を埋葬、埋蔵することを禁じています。
しかし、法務省が出した「節度を持って行われる限り問題はない」という見解との兼ね合いはどうでしょうか。
結論としては、残念ながら住宅地で遺灰を撒くという行為は、節度のないものと判断されてしまうことと思われます。
遺灰が風に乗って舞うということも考えられますし、隣近所の人たちにとっては、良い気分のものではないはずだからです。
どうやら「散骨」は、他人に影響を及ぼさない大自然の中しかないようです。
葬送の自由をすすめる会
- 自然葬第1号
- 1991(平成3)年10月5日。
ジャーナリストの安田睦彦氏を代表とする市民団体が、海や山に遺灰を撒く「散骨」を始めました。
同日午前10時、神川県の三浦半島にある三崎港から出港した船(10人乗りのヨット)は、2 時間後相模灘の中央部に到着、細かく砕かれ和紙に包んだうえガーゼの袋に入れられた遺骨が海に投げ入れられました。自然葬第1号です。
これを受け法務省も「節度を持って行われる限り問題はない」との見解を示したことで、「葬送の自由をすすめる会」では散骨による葬送を「自然葬」と名付けました。
- 結成趣旨
- 代表の安田睦彦氏が発表しました「葬送の自由をすすめる会」結成の趣旨は以下の通りです。
「私たちは何よりもまず死者を葬る方法は、各人各様に亡なった故人の遺志と、故人を追悼する遺族の遺志によって自由に決められなければならないと考えます。
ですから、私たちは環境問題や社会問題だけから葬送の自由を主張するものではなく、墓を造る自由を否定するものでもありません。
もちろん、遺骨の散乱を招くような無秩序な葬送の自由を主張するものでもありません。
私たちが『葬送の自由をすすめる会』を結成した目的は、伝統的葬法を復活させると共に、自然の理にかない環境を破壊しない葬法(このような葬法を「自然葬」とよびたい)が自由に行われる為の、社会的合意の形成実践を目指すことにあります。」と述べています。
更に安田氏は、「自然葬は単なる散骨運動ではない」とも述べています。
- 関連する法律
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- [船員法]
- 水葬の規定ですが、水葬の場合の対象は死体であって明らかに焼骨ではありません。
- [海洋汚染防止法]
- 規定に「船舶からゴミを捨ててはいけない」とありますが、船舶の場合船員の日常に伴うゴミ、汚水等は捨ててもよいことになっていますので、安田氏は「大量に組織的に撒く場合は別として、普通に撒く分には構わないというのが基本的な考え方だから、遺灰を撒いても問題はない」と述べています。
- [廃棄物処理法]
- 規定に「みだらに公共の場所にゴミを捨ててはいけない」とありますが、安田氏は「許諾を得た土地あるいは自分の所有地に遺灰を撒く場合は、少なくとも法には全く触れない。ただし公共の場所に繰り返し組織的に撒く場合には、各知事の許可が必要でしょう」と述べています。
- 米国では散灰(散骨)は、1965年にカルフォニア州で合法化されています。
- 州の条例では「火葬された遺体を海に埋葬する」と表現しています。
細かく砕いた焼骨(遺骨はほとんどが灰状になります)を、3マイル(約5キロ)沖合の海上に、ボートや飛行機等から投棄します。
- 現在の状況
- 「樹木葬」を最初は「山や森林で行われる散骨」、つまり「自然葬」であると、あるいはその一部であると誤解した方が大多数でした。
また、樹木葬を行う人のなかにも「自然葬のいくつかの形態の一つ」と理解している人もいました。
更に、樹木葬の広告にも「自然葬」と記されることはしばしばありました。
厳密にいえば「自然葬」は、「葬送の自由をすすめる会」によって商標登録されていますので、散骨以外に「自然葬」の名称を使用することは制限されています。
いまや散骨は、「海洋葬」等のさまざまな名称が付けられ葬祭業者や海運業者等の手でも実施されております。又直接家族の手で行う例も見られます。
年間死亡者数の約1%(1万人程度)が上限と推測されますが、その件数は不明です。
その他の葬送のかたち
- 海洋葬
- ㈱サン・ライフが取り扱う「自然葬」の商品名です。
同社は、「葬送の自由をすすめる会」の賛助会員で、自然葬実施委託契約を締結しています。
- 音楽葬
- 近年では多くの音楽葬で生演奏が取り入れられています。
基本的には、無宗教で行われる葬儀のスタイルです。
- 個展葬
- ホール(式場全館)をギャラリーにみたて絵画や写真を飾ります。宗教式・無宗教式でも可能な葬儀スタイルです。
- 趣味葬
- ゴルフ・釣り・ゲートボール等の、故人思い出の品々を飾ります。
宗教式・無宗教式でも可能な葬儀スタイルです。
- 友人葬
- 創価学会員の方の葬儀スタイルです。
- 宇宙葬
- カプセルに納められた遺骨は、衛星と同じ軌道を回る星となって地球を回ります。
最短で18ヶ月、長ければ10年以上周回軌道を回り続け、やがては大気圏に突入し、まるで流れ星のように輝きなが消えて行くのです。「散骨」の宇宙版と言えます。
- サイバーストーン
- インターネット上に建立したお墓(電脳墓)のことです。
遺骨の代わりに、声・写真・プロフィール等をメモリアルにします。
- 樹木葬
- 正確には「樹木葬」は墓地(自治体が許可)のことで「樹木葬墓地」と呼びます。
遺骨は、骨壺からあけられ土中に埋蔵され、山(森林)全体が墓地になります。
埋蔵地点には、花木を植え墓石(カロート等)などの人工物は設けないという合意があります。
埋蔵位置が特定(GPS)出来るので、散骨のように遺骨を細かく砕く必要はありません。
お葬式自体は、宗教葬・無宗教葬でも行われます。
岩手県一関市にあるお寺、翔雲寺の千坂げんぽう住職が、1991(平成3)年に発案し、周囲の住民の同意を得て、一関市に申請して許可されたのが「樹木葬墓地」の最初です。
「里山再生」を願い、森林全体を「樹木葬墓地」として許可を得、遺骨の埋蔵地点に花木を植える方式です。
樹木葬墓地が各地に誕生していますが、一関の樹木葬には、樹木葬墓地契約者が支払う使用料により、里山の自然環境を保全するというコンセプト(自然の再生)があります。
今では、北上山系に「奥山型樹木葬墓地」を作り、翔雲寺の別院として、樹木葬墓地用に別法人化した「知勝院」がこれらの運営に当たっています。
その他に、既存の墓地の敷地内にある区画の一部を「樹木葬墓地」としている墓地や霊園があります。
埋葬地点に花木を植えるのではなく、敷地内にあるサクラなどの樹木の周辺に複数の遺骨を埋蔵するスタイルです。
名称も「桜葬」「里山葬」などと呼ばれています。
- 永代供養墓
- 発端は、1985(昭和60)年に始まった比叡山延暦寺の「九遠墓」です。
これ以降、後継ぎを必要としない「永代供養墓」は、仏教寺院を中心に広まって行きました。
これは、社会的にも意識的にも「家族」そのものが大きく変容してきていることの現象の一つでした。
この現象を別の視点から見れば「墓革命」と言えるかもしれません。
この後、公営墓地には、「合葬式墓地」「合葬墓」などの名前が付けられたお墓が出現しました。
これらの墓は、全国の寺院墓地、民営墓地、公営墓地に展開され、現在その数はおよそ500ヶ所を超えていると推定されます。
旧来、墓地では後継ぎのいない死者は寺院の慈悲で「無縁塔」に葬られていました。
従来の「永代供養」とは、位牌等に戒名を記して寺の位牌堂に安置し、寺として供養を続行するということであって、墓そのものを永久に保存すると言うことではありません。
もちろん、永代供養墓が永代に供養されるといっても、遺骨を骨壺に入れ永久に保存するものでもありません。
予め相互で交わした約束(約款、使用規則)に基づき、場合によっては最初から、あるいは十三回忌、三十三回忌等を経て、他の遺骨と一緒にします。
つまり、最終的には文字どおりに「合葬」し仏教寺院は、死者の供養を寺院が存続する限り行うと言う仕組みです。
既存の墓地、納骨堂が「永代使用」といっているその意味は,「 後継ぎ(墓を守る者)がいる限り、期限を定めず、墓所して使用を許可する」ということであり、後継ぎが現れずに「無縁」になった場合には、墓埋法により墓所は墓地管理者の手によって改葬されます。